上伊那未来人JINー第7話「敵の影」

JINとタケルが洞窟での異変に対応しつつも、村の日常は一見すると穏やかさを取り戻していた。しかし、JINの中には拭えない違和感が残っていた。昨夜の時間破壊者の存在を裏付ける証拠が明らかになった以上、村のどこかに彼らの手が忍び込んでいる可能性は否定できなかった。

「時間破壊者がこの村に潜んでいるなら、彼らはどうやって村人に紛れ込んでいるんだろう?」と、JINは心の中で問いかけた。

その日の午後、JINとタケルは村人が集まる市場を訪れていた。農作物や日用品が並ぶ賑やかな場所だったが、JINは周囲を注意深く観察していた。時間破壊者は未来の技術を持ち込んでいる可能性が高いため、彼らの行動は何かしら現代の人々と異なるはずだった。JINは、少しでも異常な行動や装置の兆候を探そうとしていた。

「JINさん、何か変だと思う?」タケルが尋ねる。

「まだ確証はないが…見てくれ。あの男を。」JINは市場の端で、挙動不審な男を指さした。 その男は中年くらいで、村の服装になじんでいるように見えるが、どこかぎこちなく、他の村人と自然に話している様子がない。特に目を引いたのは、彼が頻繁に何か小さな装置を取り出して確認していることだった。その動作は、JINが未来の機器を扱うときに似ている。

「タケル、あの男を知っているか?」JINは小声で尋ねた。 タケルは首を振り、「知らない人だな。この村にあんな人がいた覚えはないよ。よそから来たのかも。」と答えた。

JINは確信した。あの男が時間破壊者である可能性が高い。彼は注意深く男の動きを追いながら、あまり目立たないように市場を離れた。タケルも一緒に村の裏道を歩いていたが、その途中でタケルが急に立ち止まった。

「JINさん、あの人、昨日の洞窟で見た機械と何か関係があるんじゃない?」タケルは不安そうに言った。

「その可能性は高い。時間破壊者は未来の技術を使って結晶体を奪おうとしている。だが、まだ彼が敵である確証はない。少し泳がせて様子を見るべきだ」とJINは冷静に答えた。

その夜、JINは市場で見かけた男を追跡することに決めた。男は村の外れにある古い廃屋に向かっていた。JINはその様子を物陰から見守りながら、慎重に行動した。廃屋に入った男は、懐から光る装置を取り出し、それに向かって何か話しかけていた。JINの耳には、その言葉がはっきりとは聞こえなかったが、「目標」「結晶体」といった断片的な単語が耳に届いた。

「やはり…時間破壊者だ。」JINは心の中で呟いた。

男が廃屋を出ていった後、JINはその場所を調査した。床には奇妙な跡が残されており、それは明らかに何らかのテクノロジーを使用した痕跡だった。さらに、未来の通信デバイスの一部と思われる金属片が落ちていた。

「これで間違いない。彼らはこの村を拠点に何かを企んでいる。」JINはその金属片を手に取り、未来の分析デバイスでスキャンを行った。表示されたデータは、時間破壊者がこの地でエネルギー結晶体の位置を特定しようとしていることを示していた。

「タケル、状況は想像以上に悪化している。敵は村の中で動いている。結晶体を奪われたら、未来だけでなく、この村も危険にさらされる。」とJINは緊張した声で言った。

タケルは少し怯えながらも、「じゃあ、どうするの?あの人を止めるの?」と聞いた。

「今はまだだ。確実な証拠が必要だし、彼がどこまで結晶体のことを知っているかを見極める必要がある。だが、警戒は怠るな。」JINはそう答えた。

こうしてJINは、時間破壊者の影が村に忍び寄っていることを確信した。敵の存在は確実であり、行動を起こすタイミングが近づいていると感じながら、JINはさらなる戦いの準備を始めた。

(第8話へつづく)