JINは、2025の日本に送り込まれてから数日が経過していた。未来から持ち込んだ高性能デバイスがうまく作動せず、エネルギー結晶体の正確な位置を特定することができないまま、地道に地元の情報を集めることを余儀なくされていた。村人たちと接触し、自然に溶け込むための生活を始める必要があった。
JINが降り立ったのは、長野県上伊那郡にある小さな農村だった。豊かな自然に囲まれ、田んぼや山々が広がる風光明媚な場所で、都会の喧騒とは無縁の静かな環境だ。村人たちは穏やかで親切な人々ばかりで、突然現れた旅人に対しても温かく迎え入れてくれた。JINは、まずこの土地に馴染むことを最優先に考え、村人の一人である「村田さん」の農家に住み込みで手伝うことを申し出た。
村田さんは最初は少し驚いた様子だったが、若い力を借りられることに喜び、JINを快く受け入れた。JINは未来のエージェントとして、様々な戦闘や科学技術の訓練を積んでいたが、農業については全くの初心者だった。それでも、村田さんの指導のもと、田んぼの手入れや農作業を学び、次第に村の生活に溶け込んでいった。
村での生活は一見すると平穏そのものだった。しかし、JINはこの地に何か不穏な空気を感じ取っていた。人々の優しさの裏に隠された秘密、そしてこの土地自体が持つ異様な雰囲気。未来での任務ブリーフィングでは、上伊那郡がエネルギー結晶体の重要な拠点であることが説明されていたが、結晶体が眠る正確な場所やその力の詳細についてはほとんど知らされていなかった。
ある日、JINは村田さんとの会話の中で、村の奥深くに「古代の伝説」が伝わっていることを耳にした。その伝説は、遠い昔にこの土地に強大な力を持つ「石」が埋められたというものだった。村人たちはその石を恐れ、決して近づかないようにしているという。JINは、この「石」が自分の探しているエネルギー結晶体と関係があるのではないかと直感した。
「伝説の石について、もっと詳しく聞かせてもらえませんか?」JINは村田さんに尋ねた。
「昔からこの村にはその石の話が伝わっているんだが、誰もその場所を正確には知らない。だが、村の北の山の奥にある洞窟が怪しいと言われている。あそこに入った者は二度と戻ってこないと聞いたことがあるよ」と村田さんは答えた。
JINはその話を聞きながら、これは単なる迷信や恐怖心ではなく、何か実際に存在する強大な力が関与していると感じた。エネルギー結晶体は、過去の人々にとって理解し難いものであり、それが「石」として神秘化されたのかもしれない。
村での潜入生活は続いていたが、JINは次第にこの土地の謎に迫り始めていた。結晶体の手がかりを探るため、彼はさらに村の歴史や伝説を調査する決意を固めた。時間破壊者たちがすでにこの村に潜んでいる可能性を考慮し、JINは常に警戒を怠らなかった。
「結晶体を見つけ出し、守り抜かなければならない」と、JINは心の中で誓いながら、次の行動に移る準備を始めた。
(第3話へつづく)